「それにしても、みんな良く俺が熱出してるって分かったね。本人が気づかなかったくらいなのに」

薬を飲んで一息ついた後、ペットボトルと薬の箱を回収してくれる坂本くんに向かってふと思ったことを聞いてみた。
すると彼はさも当然と言った風な顔をして言う。
「そりゃ長い付き合いだしな。話してる感じとかテンポとか、何気ないことでも分かるもんだろ」
お前だってそうだろ?と問いかけられて、そう言われてみれば…と思う。
確かに、その対象がメンバーであれば体調や機嫌の変化は本人に確認しなくても感じ取れる自信が俺にはある。
空気で感じるって言うのかな?
いつの頃からだったかは覚えていないけれど、気づけば自然とそれが分かるようになっていた。
「確かに…そうかも」
「だろ?特に、お前はいっつも笑って誤魔化すからな。ほんの少しの機微も見逃さないように俺たちは必死なんだよ」
「えぇ?」
そんなこと初めて聞いたよ。
渋い顔をしている坂本くんを見る限り、本気で言ってることは良く分かるけど。
でもなんかそれってもしかして。
「…俺って結構愛されてる?」
「お前なぁ…」
はぁ〜っとつかれた盛大なため息の後。
「当たり前だろ」
そう言った坂本くんは、ぺしりと俺の額に熱冷ましのシートを貼った。





■□Six times happiness.