…ところで皆さん。
今ここにいない他四人のメンバーが何してるのか、気になりませんか?
俺は気になります。
そしてなんとなく予想がついてます。
「ねぇ、坂本くん…」
「おう」
名前を呼んだだけで俺の言わんとしている事を理解したらしい坂本くんは、ちらりと楽屋の扉を一瞥すると足音を殺してそちらに歩み寄る。
そして。
ガチャリ。
『うわっ!!?』
勢い良く扉を開いたならば、もれなく聞こえてきたのは四つの悲鳴。
それから一気に室内へと雪崩れ込んできたのは四人の人間。
…まったく、予想通り過ぎてなんだかなぁ。
「なぁーんでこそこそ立ち聞きしてやがんだお前らは」
呆れ顔で坂本くんが見下ろしたのは、言うまでも無く妙な格好で固まっている井ノ原、剛、健、岡田の四名で。
それぞれがそれぞれに微妙な誤魔化し笑いを浮かべながら、体勢を立て直して無意味に咳払いなんかをしている。
その中で多分主犯格であろう井ノ原が、いつも以上にゆるい顔をして手をパタパタと振った。
「いや、ほら、だってさ、夫婦水入らずに立ち入るのもどうかと思ってさ〜」
あはあはっと笑って「ねぇ?」とカミセンに問いかけると、三人は含み笑いで揃ってこっくりと頷く。
…絶対言うと思ったよ、それ。
毎度毎度ほんとワンパターンだなぁ、うちの子供たちは。
「またお前らは…」
「てゆーかさぁ、坂本くんばっかずるくない?」
「はぁ?」
いきなりの健からの抗議の声に坂本くんは素っ頓狂な声。
俺としてもその「ずるくない?」の意味が分からなくて、ソファに転がった状態のまま軽く首をひねった。
「って何がずるいんだよ」
「だって坂本くんばっかおいしいとこ持ってってんじゃん!」
「そーだそーだ!俺たちだって長野くんのために色々やったのにさぁ〜」
「ぜーんぶ持ってかれたよな」
「うん」
四人からの怒涛の『口撃』に、坂本くんはなんとも微妙な表情をして俺を見てくる。
…いや、そんな顔をしたくなる気持ちは良く分かるんだけど、俺の立場的にここはノーコメントでお願いしていいですか?
「だいたいさーこれの半分は俺の優しさで出来てるからな、ってあんた何そのくさい台詞!!」
「…お前ら、一体どこから聞いてやがったんだ」
井ノ原の(半笑いを浮かべた状態での)言葉にこめかみをぴくぴくさせながら低い声でうなる坂本君の顔は赤い。
さっきは平気な顔して言ってたくせに、やっぱり恥ずかしかったのかあの台詞。
「多分最初からだよね?」
「おー長野くんのみんなおかしくない?ってとこからな」
…本当にずっと立ち聞きしてたのかお前たち。
悪びれた風もなく頷き合う剛健コンビに坂本くんは重いため息をながーくついて、がくりとうなだれた。
あーあ。
「長野くん、大丈夫?」
「ん?あぁうん、大丈夫大丈夫」
そんな一連の流れには加わらないで、いつの間にか近づいて来ていた岡田が俺の顔を上から覗き込むようにして言った。
おお、なんだか岡田の顔をこんなに近くで見たの久しぶりかも。
「岡田」
「なに?」
「相変わらず濃い顔だよなぁお前」
「…長野くん」
あらら、呆れた顔されちゃった。
いや、結構率直な感想だったんだけどなぁ今の。
気を悪くしたならごめんな?
「よしよし」
「…………坂本くん」
「あ?」
「長野くんの熱何度あるの?」
「38度4分」
「…だからか」
「どうかしたか?」
「いや、言動がおかしいから」
って頭撫でただけなのにその言い方は酷くないか?
失礼だなぁ。
「熱が上がってきたのかもな。やっぱ医者連れてくか」
「薬飲んだし大丈夫だってば」
だいたいそこまで迷惑かけるわけにもいかないし。
「長野くん無理しちゃダメだよ?」
「してないよ、大丈夫」
ただでさえ八の字の眉毛をさらに八の字にしている健に笑って返す。
「坂本くんの優しさだけじゃ足りなければ俺の愛もあげるしっv」
「井ノ原…ありがた迷惑」
「酷っ!」
そりゃねーよ!と反論する井ノ原には笑顔で毒を。
「マジで、無理すんなよ?長野くん」
「本当に大丈夫だからそんなに心配しないでいいよ」
珍しいトーンでそう言ってくれる剛へは微苦笑を向けて答えた。
…それにしても。
こんなに心配してもらっておきながら何だけど、五人があまりにも心配そうな顔をして俺の顔を代わる代わる覗き込んでくるもんだから、申し訳なく思うよりも逆になんだか笑えて来てしまった。
だから自然緩んだ口元を片手で押さえてごまかしたら、今度はそれを吐き気でも催したんだと捉えたらしい五人が慌てた様子で口々にどうした?とか大丈夫?とか聞いてくる。
…なんと言いますか。
俺ってかなり愛されてるんだって、うぬぼれちゃってもいいのかな。
「ねえ、みんな」
声をかけると心配を滲ませたまま揃ってこちらを見つめる五つの顔。
優しくて、非常に個性的な俺の大事な大事な仲間たち。
「ありがとう」
それはほんの些細なものかもしれないけど。
俺は君たちのおかげで毎日幸せです。
a sense of happiness.
ふとした時に気づく、それは何よりも確かな俺の幸福。
END.
■□Comment.
書きたかったのはバファリンのくだりであることは言わずもがな。(笑)
(葛根湯とどちらにするかギリギリまで迷ったとか言う話も・笑)
毎度の如く出口が見つからなくて、結局ぐだぐだ長く続いたのはご愛嬌。
まぁとにかくみんなに愛されている博さんを書きたかったんだと思われます。
博さん中心のお話をご所望下さっている皆様に捧げます。(笑)
ちなみにa sense of happinessは『幸福感』と訳すそうです。
2009.06.09.Tuesday