いつものレギュラー収録日。

使い慣れた楽屋内でいつもどおり、六人六様思い思いの待ち時間を過ごしている時。
買ったばかりの真新しい雑誌(当然ながらグルメ雑誌です)をめくっていた俺は、ふいに誰かの視線を感じて目線を引き上げた。
と、途端にぱちりと合う視線。
かと思ったら目が合った相手は座っていたソファから立ち上がって、ちょっとだるそうに足を引きずりながら(と言ってもこれが彼の普通だったりするんだけど)俺の前まで来ると右手をグーのまま突き出した。
「ん」
「え?」
「手」
「手?手がどうした?」
「出して」
「あぁ、はいはい」
端的過ぎる言葉をようやく理解して右手を差し出せば、相手は突き出していたグーの手を無造作に開く。
すると。

ばらばらばら。

「わっ」
開かれた手から落ちてきたのはセロファンにくるまれた小ぶりな飴玉で。
こぼれそうになるそれを慌てて両手で受け止めると、相手は満足そうな顔をして八重歯を見せながらにっと笑った。
「どーぞ」
「え?あ、どうも?」
どうぞという言葉に流されるままお礼は言ってみたものの、一体急になんなんだ?
なんでまた飴玉?
けれど俺がその疑問を口にする前に、相手は何も言わずにさっさと元のソファへと戻って行ってしまう。
う、うーん…
なんだか答えを聞きそびれてしまった俺は、手の中の飴玉とソファに戻った相手を交互に見て。
とりあえずもらった飴玉の一粒を口の中へと放り込んだ。





■□Two Leaf Clover.