こもれびのばしょ。
オトメは強し。
「あら?係長、そちらは?」
やがて井上の存在に気づいたらしい小宮山が、いかにも興味津々です!という顔をして加納にそう聞いた。
どうやら加納の隣に大人しく納まっている井上を見て、加納の知り合いと判断したらしい。
ここは自分から名乗り出るべきだろうと口を開きかけた井上だが、しかし。
それを実行する前に小宮山が隣の村瀬の肩をバシバシと叩いてやたらと嬉しそうに言った。
「やだ、ちょっと主任さん、イケメンよイケメン!」
「いたっ!ちょ、痛い!!痛いよ小宮山くん!!」
身を捩じらせながらの村瀬のそんな抗議は当然の如く通用するはずもなく。
目をきらきらと輝かせた小宮山は妙に高い声になって加納に聞いた。
「係長のお知り合いの方ですか?」
「ううん。浅輪くんのお友達。井上薫くん」
「あ、井上です、初めまして」
話の流れとは言え、結局加納に紹介されてしまった井上は、妙な展開だなと思いつつ、座礼では失礼だろうと律儀に立ち上がり一礼する。
「青年のお友達!初めまして、小宮山ですぅ〜」
両手を胸の前で併せたポーズ、プラス明らかなる猫なで声に、ぼそりと呟いたのは隣の村瀬である。
「いっそ見事ほどの猫被りっぷりだな・・・」
「な・に・か・言いました?」
「うっ!・・・いや、別に・・・」
笑顔のまま詰め寄る小宮山に対し、引きつった顔で後退る村瀬。
まさに力関係の象徴だな、と井上は一人妙な感心をした。
「あはあは。薫くん、小宮山さんには気をつけろよ〜」
「ちょっと青年まで!」
相変わらずコーヒーの準備をしながらのんきに笑う浅輪へ、小宮山が怒りの矛先を変えたその時。
「はいはいはいはい、ごめんなさいよーっと!」
「只今戻りましたー」
二人の男が連れ立って室内へと入ってきた。