11月17日夜半。
ある一通のメールが、仕事から帰宅して自宅にてのんびりとしていた彼の元に届いた。
静かな部屋の中、心臓に悪い音と共に。
[ガタガタガタッ!!]
「うおっ?!」
テーブルの上に置いた、仕事場で鳴ったらまずいとマナーモードにしてそのままだった携帯が振動し、それがテーブルを叩き派手な音を立ててメールの着信を知らせる。
おかげで思わず声を上げて驚いた上に、寝転んでいたソファの上から落っこちそうになった彼は、誰が見ているというわけでもないのに頬を赤くしてごほんと一度咳払いをしてから、振動し終えた携帯を手に取った。
「…誰やねん一体」
メールを送ってきた誰かさんに半ば八つ当たり的に不機嫌な独り言を言いつつ、折りたたみ式の携帯をパカリと開ける。
そうすると分かる送信主。
「なんや剛くんからや。なんやろ…」
メールの送り主は良く見知った、長い付き合いのメンバーからのもの。
しかし相手はそう滅多にメールをよこさない人間なので一体何事かと思い、彼は携帯を手際良く操作してそのメールを開いた。
そしてすぐにこてりと首を傾げる。
「…なんやろ、これは」
届いたメールに書かれていたのは『外に出ろ!』というだけのごくシンプルなもの。
一瞬悪戯メールかと疑わないでもなかったが、送信主は確かに見知った相手であり、その相手がわざわざ悪戯メールを送ってくるようなことはしないと彼は思う。
…約一名、やりそうな某細目の人間が頭に浮かんだりしたが、今は関係がないので浮かべただけに留めておく。
「…外に出ると何かあるんか?」
疑心暗鬼ではありつつも、元来素直な性格の彼はとりあえずメールの指示に従ってみることにしたらしい。
携帯を持ったまま立ち上がり、そのままの格好で部屋の玄関へと足を運んだ。
「…何してんねん」
「あ、剛来た来た」
「あ?おっ。おー!!」
玄関の扉を開けて廊下からマンション前の通りを見るなり、目に入ってきた『それ』に大きく目を見開いてから彼が呆れ気味にそう呟くと、『それ』の近くに立った青年が二人、にかっと笑って大きく手を振ってきた。
・・・そんなに騒がれても近所迷惑やから。
浮かんだ言葉をなんとか飲み込んで、二人に呆れたままの声で呼びかける。
なるべく近所迷惑にならない程度の声で。(とは言え既に近所迷惑確定だろうが)
「何してんねん二人とも!!そんなんしたらアカンやろ!!」
「ちゃんと後で消すって!!って第一声がそれかよぉ〜!!」
二人のうちの片っ方。
短髪にあどけない、可愛らしい顔をした青年がそう言って腕をぶんぶんと振り回す。
その隣ではもう一人の青年がうひゃひゃっと独特の笑い方で笑った。
「ちょーどいいタイミングだったな。ジャスト0時!本日11月18日〜♪」
「そーそー、んじゃ剛」
「おう」
せーの、と息を合わせて。
二人が次に紡いだ言葉は。
『Happy Birthday!!』
そう。
0時を過ぎて日付が変わった本日、11月18日は彼の。
岡田准一の26回目の誕生日なのだ。
目に入ってきた『それ』とは、アスファルトの地面に石灰か何かで書かれた『Happy Birthday!!』のでかでかとした文字で。
「それ消すの大変やん・・・」
「ちゃんと後で俺たちが消しますっ!!って第一声がそれかよぉ〜!!」
「おっまえまずHappyBirthdayって言われたら言うことがあんだろっ!!」
「強要されて言うことでもないと思うねんけどな・・・」
まぁそんなことを言っても、喜びに緩む口元は隠せないわけで。
とりあえずは。
「ありがとう!!」
近所迷惑だとかなんだとか言うことはひとまず置いておいて。
岡田はありったけの感謝を込めて、そう声を上げて返した。
そんな彼に二人は顔を見合わせにんまりと笑い。
『イエ〜!!』
…やから、そんなに騒がんといて。
今深夜やねんから。
もはやありがた迷惑状態の二人に苦笑しつつ、岡田は駆け足で二人の元へと向かうのであった。
HAPPY BIRTHDAY JUNICHI OKADA.
END.
≫Kohki's Comment.
んーと多分これ去年の岡田の誕生日時に書いてたものだと思うんですよね。(またか)
カミセンだけの話が書きたくて書いたものだったので珍しくも兄さんたちの出番なし。(笑)
今回多少の手直しをして友のOKももらえたのでアップしてみました。
ちなみに石灰の掃除は結局岡田さんも手伝うハメになったと思います。(笑)
2006.11.18.Saturday
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