「でさーなんだかんだ言って俺って愛されてるなーって思ったわけよ」
「ほぉー・・・相変わらず仲睦まじいグループやなぁ」
感心するわ、と言うつよしに満足そうな顔で笑う井ノ原。
偶然同じスタジオで収録があると判明したとある日、井ノ原はKinkiの楽屋にいた。
先日のメンバーからの誕生日プレゼントの話をつよし相手に一通りすませてすっかりご機嫌顔である。
ただし『彼は』の話だが。
「・・・所でいのっち」
「はいはい?」
実は聞くと言った覚えも無いのに強制的に一通り井ノ原の長〜い話を聞かされる羽目になったつよしは、にっこり笑顔のままずずいと井ノ原に詰め寄った。
「おのれは人の楽屋に急にやって来たと思ったら勝手に陣取った上に一人語りだして・・・要するにのろけ話をするためだけに来たんか?」
「え?」
もうまさにその通りです。
そんな風に言わんばかりの井ノ原の笑顔につよしは大きくため息をついてから思いっきり声を上げた。
「・・・っもー帰れっ!!」
「えー冷たいこと言うなよぉーつよちゃ〜ん!!」
「きしょいわっ!!もー帰れこの細目っ!!」
「あはあはv」
なよなよとしながらくっついてくる井ノ原を押しのけ押しのけ。
対する井ノ原はひたすらくっつっくっつき。
そんな攻防戦を繰り広げていたら、呆れたような声が降って来て二人は顔を上げた。
「・・・井ノ原くん、うちの剛で遊ばんといてもらえます?」
「光一!」
「あー光一だー久しぶり〜」
天の助け、とでも言うようなつよしの声と間延びした井ノ原の声。
その対照的さに苦笑してから光一はさっき廊下で見た光景を井ノ原に伝えた。
「久しぶり。って言うかええんか?坂本くんたち探しとったで。長野くんなんて偉い形相やったわ」
その一言に明らかに凍りつく井ノ原。
「・・・マジですか」
「マジですわ」
「あーあ。アホやな〜いのっち。長野くん怒らせたら怖いでぇ〜」
「怖いな、あの人目がマジやったもん。笑ってるのに笑ってへんって言うのはああいうののことやな」
長野の脅威はどうやらKinkiにまで通じているらしい。
二人は神妙な顔でうんうんと頷きあう。
それに対し井ノ原は情けない声で嘆く。
「かっ・・・帰りたくねぇ〜!!」
『大人しく帰れ』
「一緒についてきてっ!!」
『なんでやねん!!』
「うう・・・冷たい・・・アタシとあなたたちの仲じゃないっ!!」
『どんな仲やねん』
「いちいち小気味よく突っ込んでくれるよねぇ、キミタチは・・・」
一連の流れにしみじみとそう返す井ノ原。
素晴らしいボケと突っ込み・・・かどうかはいざ知らず。
「もーええからさっさと帰りや。ほんまにこれ以上待たせたら大変な事になるんとちゃうか?」
「おっと、そうだった。じゃ〜またな!おっじゃましましたぁ〜♪」
颯爽と帰って行こうとした井ノ原に向かって、二人は声をそろえてこう返す。
『ほんとにな』
「あっ、ひどっ!!」
井ノ原が戻って行った廊下を眺めてみれば、ちょっと離れた所でメンバーに囲まれて笑顔の井ノ原が見える。
「ほんまに仲ええなぁ、あのグループは」
「気持ち悪いくらいな」
感心したように光一が呟いた言葉につよしがそう付け足す。
それから何かにはたと気付いたつよしはしまった、というような顔をした。
「どうした?」
「うっかりしとった。俺肝心な事言い忘れとったわ」
「何を?」
「誕生日おめでとうって、言うの忘れた」
「あー・・・ま、後でええんちゃうか?」
ちらりと光一が向けた視線を辿ってみて、つよしはあぁ、と頷く。
「そうやな、なんや楽しそうにじゃれとるし」
その視線の先にはメンバーにどつかれ回されている井ノ原の姿。
多分、行方をくらましていた制裁なのだろうが、その誰もが笑顔で楽しそうで。
どう見てもただじゃれあっているようにしか見えない。
「まぁとりあえず・・・」
つよしと光一は顔を見合わせてから、そんな彼らの方にそっと言葉を投げかけた。
『誕生日おめでとう、いのっち』
「ったく、井ノ原くんはよぉ〜」
「俺たちがどれだけ捜したか分かってんのぉ?」
「時間間に合わん所やったで」
「はい・・・すいません」
カミセンに責められてへこへこと謝る井ノ原。
「マジで勘弁してくれよ井ノ原・・・俺は知らねぇぞ」
そう言ってちろりと坂本が目をやった先には、見事な笑顔で怒っている長野の姿があるわけで。
・・・こえぇぇ・・・
「もう29歳になったんだから、いいかげん落ち着きを持ってくれないかな、井ノ原?」
「す・・・すんません」
この歳になってこんな怒られ方してるの、正直俺だけだと思います。
そう思って軽く凹む井ノ原であった。
as ever.
どれだけ年をとっても、相変わらずの僕ら。
END.
■□ COMMENT.
紆余曲折を繰り広げて(?)ようやく書きあがりましたいのっち誕生日小説。
如何でしたでしょうか?
正直最初から最後までストーリーは決まってたのでそう時間はかからないだろうと思ってたんですが・・・これが意外に難しかった。
オチの付け方に散々悩んでしまいましたよ。
結局Kinkiさんに御協力頂く形に落ち着きました。(笑)
一人一人の話が短めでちょっとあっさりとしすぎたか?とも思うわけですが、まぁタイムリミットが迫ってきたので結局加筆することなくそのままで。
とりあえず形になったので俺は満足です。(笑)
よろしければ感想など下されば幸い♪
最後に、いのっち誕生日オメデトウ☆
20代最後の一年を謳歌したまえよ。(えらそうに・笑)