右手に染み込んだ硝煙の匂いが、俺を現実に引き戻す。
『どうして』
そう繰り返す、ことに答えはないだろうに。
分かってる。
もうそれは取り戻すことが叶わないものだということは。
いつからか道を違えてしまった。
それは運命と言うよりは、求めた必然だったことにも。
エンジンは、薄汚れた排気を吐き出しながら虚しく空回りする。
真っ黒な自分を真っ白なシーツの波へと放り出す。
指先で触れる硬質な機械。
鳴る筈が無いことが分かっているそれを、ゆっくりと手のひらに握り込んだ。
いつまでも未練がましく、そのディスプレイを眺めて。
絶望と言う言葉を意識する暇もなく、流れ出たものに呆然とした。
悲哀などと、自分が言葉にするのはおこがましい。
そんな資格が自分に有る筈も無い。
嗚咽を上げることもなく、ただ全てを無表情のままに流し出す。
それは無色透明の筈なのに、どうしてか真っ赤に染まっているような気がした。
この手で握り潰したものの大きさを、知らない筈も無かった。
きっと自分はもう、前に進むことはない。
全てを消し去ろうと思った。
着の身着のまま頭からかぶる冷たいシャワー。
とにかく全てを洗い流そうと苦心する。
けれどそれらは到底洗い流せるようなものではなくて。
硝煙の匂いも。
衝撃も。
広がった紅も。
衝動も。
消化されることなく昇華していく。
そして俺は本当の必然に気付いて、沈み行く意識の中でただ途方に暮れる。
END.
≫Kohki's Comment.
Cut6月号の准一さん特集(笑)を見て思いついた妄想のままに書き殴った短文。
是非ともCut6月号をお手元に置いてからご覧下さい。
じゃないとさっぱり意味が分からないから。(ダメじゃん)
ついでに准一さんの声で読むと尚良し。
V小説としては道を違えた相手はリーダーか博さんだったら素敵だと思う。(笑)
つーか何があったんだろうかこの人たち・・・(自分で書いておきながら・笑)
こういう曖昧な話は書くのは苦手ながら何気に好きだ。
しかし実際雑誌はどういうイメージで撮ったものなのか・・・
もし皆さんの抱いていたイメージを壊しましたら申し訳ない限りです・・・(汗)