取調室。


取り調べ室のイスに座った長野は、いつもと変わらぬ微笑みを浮かべ、坂本を迎えた。
「やぁ、ハンチョウ」
「まさか、お前とこういう形で向き合う事になるとはな」
「俺もびっくりだよ。まさかハンチョウ殿から取り調べを受ける機会があるなんてね」
軽く肩をすくめてみせる長野は、やはりいつもと変わりのない穏やかな空気をまとっている。
元より彼を疑ってなどいなかった坂本だが、こうも取り調べ室で堂々とされると、意地悪の一つもしてみたくなると言うものだ。
「それで、やったのか?」
対面のパイプイスに腰掛けながら、わざと重々しい口調でそう訪ねてみれば。
「愚問だね」
と、間髪入れず、すっぱりと問いを切り捨てられる。
しかも長野に浮かんでいるのは、ふてぶてしいを通り越して、凶悪なまでの笑みだ。
こいつをここまで怒らせた馬鹿はどこのどいつだ、と心中で毒づきながら、坂本は息を吐いて言った。
「だろうな」
「あれ?信じてくれるの?」
「そもそも、もしお前が犯人ならこんな風に簡単に捕まるようなヘマはしないだろ」
こう言うのもなんだが、そういうヤツなのである。
長野博と言う男は。
「さすがはハンチョウ、良くわかってるじゃない」
凶悪な笑みから一転、機嫌良さそうに笑った長野は、スチール製の机の上で頬杖を付くと。
「俺を敵に回すとどういう事になるか、真犯人にはしっかり教えてあげないとね」
緩慢な仕草で首を傾げ、ゆっくりと目を細めるのだった。


Comment


逃げて!犯人超逃げて!と言いたくなるレベルの恐ろしさ。(笑)
安積班最新作が速水さんが犯人扱いされる話なので無性に書きたくなったのがこれって言う。
ちなみに原作はまだ連載中ゆえ未読。はよ!新刊はよ!
やっぱり安積班シリーズはハンチョウと速水さんが揃ってこそだよね、とドラマスタッフに言葉を投げつけたいですはい。(笑)