腰掛けると少しだけ軋んだ音がするソファ。
それに座ってその背に体を預ける。
首をのけぞらせて、顔は天井に向けて。
とにかく重い気持ちを吐き出すように、深く息を吐いた。
「…あかんわ」
弱音を口にすると、それがより一層自分を弱くする。
それが分かっていながらも口をついて出た言葉に唇を噛む。
もう慢性的になってしまっている腹部の違和感。
過呼吸気味になる呼吸。
自分の不甲斐なさをむざむざと見せ付けられたようで悔しいと嘆く。
両手を膝の上でぎゅっとにぎって、瞳を閉じた。
「・・・お前、ちゃんと休んどるんか?」
ふと、額に感じた誰かの体温と降って来た優しい声。
瞳を開ければ心配そうな表情を浮かべた見慣れた顔が上から見下ろしてくる。
額に感じた体温は彼が乗せた彼の手だと気づき、
あぁ、と思う。
「・・・休んでるよ。けど、こればっかりは俺の精神的なもんやし」
やから大丈夫、と力なく微笑めば額の手が今度は髪を撫でた。
「お前は昔っからそうやもんな。頑張って無理するタイプ」
言われた言葉にそうかなぁ、と思って目を瞬かせれば彼の苦笑が返って来る。
「最近周りからの反応も色々やったし・・・お前も随分頑張ってきたやんなぁ」
よく頑張ったな、なんて自分を褒める彼らしくない言葉。
それが妙にくすぐったくて頬を緩めた。
「なん、似合わへんこと言うなやぁ。気色悪いやん」
「おう。俺も今我ながら気持ち悪い思ったわ」
「俺らこういうキャラとちゃうやんか」
「けど、もっと気持ち悪いこと言うで俺は」
いきなりのそんな宣言に上を向けたままの首を軽くひねって傾げる。
髪を撫でるのをやめて、妙に真摯な顔になって言った彼の言葉に
不覚にも泣きそうになった。
「『ここ』ではお前は一人やないやろ。辛いなら俺に寄りかかってもええんやからな」
もう昔からずっとずっと。
隣に立つパートナーは、そう言って優しく微笑む。
あぁ、とまた思った。
「・・・むっちゃ恥ずかしいやん」
「ってやっぱキャラじゃねぇ!!キモッ!!自分で言って鳥肌たったわ!!」
「アホやん自分」
大げさに騒ぎ立てて腕の鳥肌をアピールする彼に大きく笑って。
ほっと、胸の支えが取れた気分でずっと握ったままだった両手の力を抜いた。
大丈夫。
『この場所』があるから大丈夫。
その言葉をゆっくりと噛み締める。
ふと気づけば、過呼吸気味だった呼吸もおさまって
腹部の違和感もすっかりなくなっている。
「・・・やっぱ、大事やんなぁ」
『この場所』は自分にとって、一番安らかで在れる場所だ。
今の自分にはどれもこれも大事だけれど、『この場所』は特に譲れない。
ここが自分の帰る場所だと、分かっているから。
「・・・んふふ」
不意にこみ上げてきた温かい感情に満たされ、微笑みをこぼすと
怪訝な顔をした彼がぺしっと額を叩いてきた。
「・・・なんやねん、折角人が幸せに浸っとんのにぃ」
「いや、なんや気色悪い笑いやぞお前」
「って失礼なやっちゃな〜!!」
折角見直したのに!とソファから立ち上がって珍しくも彼にじゃれついてやる。
滅多にこんなやり取りをしない自分たちだが、今日ばかりはそんな気分なのだ。
だから同じ気分の彼も破顔一笑してそれに答えてやった。
そんなわけで、しばらく続いたその賑やかなやり取りに
扉を開いてその光景を見たマネージャーが
珍しいこともあるものだと、どこか呆れた顔をして
楽屋の扉をぱたりと閉めた事に二人は気づかなかった。
「んふふふふ。最近俺鍛えてるから強いでぇ〜♪」
「げっ!タンマ!!これどう考えても俺の方が不利やん!!(汗)」
「光一は細すぎんねん!!」
「剛は太すぎや!!」
『なんやと〜!!(笑)』
End.
光ちゃんの日記を読んで、ただ漠然と剛には光ちゃんがいるから大丈夫だと思った。
そしたらふっと話が浮かんだので書いてみました。
ソロはソロ、KinkiはKinki。
それに対してとやかく言うのはやめてあげて欲しいな、と思うんです。
本人たちにとってみればどちらも大事な表現の場所だと思うから。
と、まぁそんなシリアスなことを書きつつもしっかりオチは付いているという。(笑)
淡々として非常に俺らしい小説ですな。(と、自分で言ってみる)
気まぐれなKinkiさん小説にお付き合い下さりありがとうございました。