● かぼちゃが笑う日 ●
かぼちゃが笑う。
今夜はハロウィンだから。
「かわいい〜。ちょ〜かわいい〜。流石長野くんの子供だね」
一匹のシーツお化けが友人の人狼の周りを漂っていた。
父親の人狼の腕の中に二匹、母親の人狼の腕の中に一匹。
計三匹の生まれて間もない人狼の赤ん坊は、
ふわふわ浮かぶ変な生き物に興味を示し手を伸ばす。
そのかわいらしさに、シーツお化けの井ノ原は撃ち落とされた。
「ねぇ、一匹俺に頂戴v」
「誰がやるか。三匹とも俺らの子だ!」
「いいじゃん。坂本くんに一匹、長野くんに一匹、俺に一匹で」
とっても素敵な考えだ、と言わんばかりに井ノ原はその場でくるくる回転し出した。
その一方、父親の坂本は思いっきり嫌な顔をし、
母親の長野は井ノ原の突拍子もない考えに笑っていた。
「長野!お前、その一匹死守しろよ!」
坂本が二匹の赤ん坊を抱えたまま、井ノ原から逃げ出す。
二匹の赤ん坊は、訳も分からず笑っている。
「待〜て〜ぃ〜」
二匹の追いかけっこ。
必死で走る坂本には気の毒だが、どう見ても空中の井ノ原の方が優勢だ。
時々、宙返りや側転なんかを披露している。
「馬鹿だねぇ、二匹とも」
「う?」
長野の腕の中で、赤ん坊はちょこんと首を傾げた。
赤ん坊の頭を撫でながら、長野は微笑んだ。
その隣で、坂本の作ったハロウィンのかぼちゃも笑っていた。
* * * * * *
「あぁ、今夜はなんて素敵な夜なんだ」
「うるせぇ、井ノ原」
「井ノ原くん、うざい〜」
「こんなに大きくなっちゃって〜。昔は俺の裾で寝れるくらい小ちゃかったのに」
ぱふっと、シーツお化けの井ノ原が抱きつくように人狼の剛と健の頭に被さる。
「お兄ちゃんはうれしいよ!」
「や、お前、俺の子じゃねぇし。ってか、寧ろ種族違うし」
剛と健の父親である坂本は呆れながら友人の井ノ原を見ていた。
今年も作ってもらったハロウィンのかぼちゃ。
手のひらサイズのそれを右手に乗せ、長野は昔のことを思い出していた。
「どうしたん?」
「ちょっとね、昔を思い出してたんだよ」
末っ子の准はちょこんと首を傾げた。
それを見て、長野はクスクスと笑う。
「准達が生まれたのも今夜みたいに月が綺麗なハロウィンの夜だったんだよ」
長野は手の上のかぼちゃを見つめながら、もう一度微笑んだ。
かぼちゃが笑う。
今夜はハロウィンだから。
こんな僕らを見て、笑っている。
おまけ
「あれは、まだ坂本くんが井ノ原の相手をしてあげられるくらい体力があった頃だよ」
「長野……(泣)」
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◆後書き(月代様より)
『美人な母子と我が子を溺愛する友人に呆れる父親』です。
長野さんの手の中のかぼちゃと目が合った為、かぼちゃ出張ってます。
この小話とかけまして、ハロウィンのかぼちゃと解く。
その心は。『似ても焼いても食えない』
お粗末さまでした。
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◆Kohki's Comment.
いやーもうどうですかコレ!
あまりの可愛さに俺は身悶えしましたよ!(やめれ)
児童文学小説を読んでいるかのような文に、表情豊かな六人。
たったあれだけの絵にこんな素敵な小話を書いて頂けて作者冥利に尽きます!
月代さん本当にありがとうございました♪
大事にさせて頂きますv