少しだけ離れた所で、教会の鐘が鳴る音が聞こえた。







[リーンゴーン・・・リーンゴーン・・・]







今日、この瞬間から。

恋人から夫婦へと関係を変える二人を、祝福するための鐘の音はよく澄んでいて。

同じく澄み切った空と空気は、二人の門出を優しく包み込んでいるように思えた。

それを微笑ましく思って、しかし眉を寄せて彼は呟いた。


「・・・おっそいなぁ。式始まっちゃうよ」


黒のスーツをきっちりと着こなした青年は、困ったように腕時計を何度も見る。

晴れて今日、夫婦となる二人を祝うためにこの場所へとやってきたのだが、

いかんせん、一緒に行くはずの相手がどうやら前の仕事が押しているようで

なかなかやってこなかった。

片腕に抱いた二人へ贈る花束を見て、はぁ、とため息をつく。


「参ったな・・・」


こうなったら自分一人でも先に行こうかと彼が考えを巡らせた時。


「長野!!」

「あ。坂本くん、遅いよ!!」

「悪い!!」


ようやく待ちかねていた人物が青年の前に止まった車から慌てて飛び出してきた。

どうやらマネージャーがここまで送ってきたらしく、

車内から苦笑して軽く頭を下げている。


「ったく参ったよ。撮影がまさかここまで押すとは思わなかった」


わしわしと髪をかき混ぜてから手ぐしで整えて、疲れたようにそう言う。

こちらの彼も黒のスーツをきっちり着こんで、しかし慌てて準備したようで

白のネクタイがどうにも歪んでいた。


「まったく。坂本くん、ちょっとこれ持ってて」

「あ?」

「ネクタイ、曲がってるんだよ」

「あ」


差し出された花束の理由を解して、彼は素直にそれを片腕で受け取り、少しだけ前かがみになる。

青年は手際よく彼のネクタイを調えてやって、はい、完了。と肩を叩いた。


「よし、急ぐよ。もう式が始まる時間だよ」

「おう。ただでさえ目立つってのに遅刻はまずいよな」


そんな会話を合図にして、二人は駆け出した。

目指す場所は、澄んだ鐘の音を響かせている教会、チャペル。

今日は二人の共通の友人の結婚式なのだ。














メインがまぁっぽくてすんません(汗)



「・・・幸せそうだね」

「ああ」

「ふふ。先越されちゃったなぁ」

「だな」


少し離れた所で嬉しそうに微笑んでいる花嫁姿の友人を見て、二人は頬を緩ませる。

普段の彼女も綺麗だが、今日の彼女はいつも以上に輝いて魅力的だと思う。

おかしな話だが、言っている言葉とは裏腹に

何故だか二人して花嫁の父親のような心境でその光景を眺めた。


「・・・ま。それじゃ、そろそろ行きますか」

「大騒ぎされなきゃいいけどな」

「まぁならないって言い切れないけど、なんとかなるでしょ」


二人はにっと微笑みを交わして、来客に囲まれている花嫁の下へと歩み寄って行く。


「ほんと、俺たち直々に祝ってもらえるなんて世界一幸せな花嫁だぜ?」

「ははっ。芸能人オーラないって散々言われてるくせに」

「・・・うっせ」










さぁ、特別な一日を刻もう。



Happy Wedding 2004.10.02.Saturday









END.






■Kohki's Comment.

MY FAVORITEのちえみさんのご結婚祝いに一方的に捧げさせて頂いたものです。(迷惑な)
ちえみさんの結婚式に出席するツートップなぞを書いてみました。
当初はちえみさんの好きな長野&岡田コンビで普通にイラストを描いて送ろうと思っていたんです。
ところがどっこい。
「先越されちゃったね」うんぬんの会話をさせたくて、人物をツートップに変更した上にふと思いついた微妙な小説までつけたという。(笑)
幸いご本人様には喜んで頂けたようなのでよかったです♪

皆様、ご結婚の際には光騎@管理人に是非ご連絡を。
もれなく好きなメンバーが貴方の結婚式に出席いたします。(本当かよ・笑)