寒空と言えるほど気温は下がっていない。
11月の始まりの一日。


今年の秋は随分と温暖なようで。
街の街路樹はまだ秋の色に染まってはいなかった。


仕事終わり、帰路を行くマネージャー運転の車の中。
車窓を流れる景色をぼんやりと眺める。
至って普通の一日。
何もしないでも、通り過ぎて行ってしまうような日常の一つ。


でも、それでは少し寂しいような気がして。


気が付けば携帯を取り出していた。










「・・・あ。もしもし、俺。今、大丈夫か?」

繋がった電話。
しかし思わずコールしてみたものの、何を話したらいいのか分からずに戸惑う。
自分がかけておきながら、それはないだろうと苦笑いしかけたら。
電話先の相手が笑ったのが分かった。

「・・・なんだよ。何笑ってんだよ」

思いがけず拗ねたような声になった。
相手はますます笑いを濃くして、何でそんなに寂しそうな声をしているのかと聞いてくる。
そんな声を出したつもりはないが、寂しく思ってつい電話をかけたのは事実だ。
だが、だからと言ってそれを認めるのは癪に障る。

「別に、そんな声出してないぞ。って言うかいつまで笑ってるんだ、お前は」

よほど自分の態度がおかしかったのか、相変わらず笑みを含んだ声が耳元に届く。
優しく柔らかい声は耳障りがいいが、笑われるのは嬉しくない。

「・・・ただ、何にも無い一日で終わらせるのが嫌だったんだよ」

だからそんな本音を零してみる。
一体どんな反応が返ってくるのだろうかと待ち構えていたら。
相手は少しの無言の後、いきなり後でかけ直すと言って一方的に電話を切ってしまった。

「は?あ、おい!・・・いきなりなんだ、あいつ」

どうにも釈然としない気持ちで携帯の画面を見つめる。
が、それはただ、通話時間を示すばかりだった。










それから三十分が経過したくらいだっただろうか。

「あ?メール?」

振動を始めた携帯を開いて画面を見ると、メール受信のメッセージが表示されていた。
メールを開こうとボタンを押し込みかけたが、しかし。
再びの振動に手を止める。

「またメールか?」

受信メールの件数が二件に増えている。
立て続けにメールが届くとは珍しい。
改めてメールを開こうとボタンを押し込みかけた手に、何故かまたもや更なる振動がやって来た。

「な、なんだ?」

それは今度もメールの受信を告げる振動である。
三度も続くとなるとそれは偶発的なものではなく、誰かが作為的にやっているとしか思えない。
結局その振動はほとんど間隔を空けず、五回も続いて。
その回数で、なんとなく予想がついた。
これはもしかしたら、あいつらからのメールじゃなかろうか。

「一体何事だ・・・?」

今度こそメールのページを開いて、一覧から送られてきたメールを調べてみる。
そこには予想通りの名前がずらっと並んでいて、思わず吹き出しそうになった。

「ったく、何やってるんだあいつらは」

そうは言いながらも、緩んだ頬はそのままに。
とりあえずメールを見てみようと、一番最初に届いたメールを開いた。
送信者は井ノ原だ。

「・・・ぶっ!!」

表示されたものに、今度こそ吹き出した。
件名も本文も無いメールに添付されていた一枚の写真。
思うに自分で自分に携帯を向けて撮ったのだろう。
変顔をキメた井ノ原がピースをしている写真が携帯の画面いっぱいに表示された。

「なんだこれ・・・まさか全員このパターンなのか・・・?」

妙な期待を抱きながら、次のメールを選択する。
送信者は健だ。

「どれ・・・うわー・・・」

思わず苦笑いした。
やはり件名と本文には何もなく、添付されているのは一枚の写真。
画面に映し出されたのは、上目遣いにはにかみ笑顔の可愛いオーラ100%放出中の健である。
三十路を過ぎてもなおこのオーラを出せるのは健くらいじゃなかろうか。
ある意味尊敬に値する。

「次は・・・剛か」

開いてみれば、出て来たのは若干照れが伺える表情ながら、にかりと笑っている剛の写真である。
思えば彼からメールが、しかも写真付きで送られてくる事自体がレアなわけで。
デビュー当時のことを思うと、随分自分たちも歩み寄ったもんだと妙にしみじみ思ってしまった。
俺も歳か、と思ったことは己が内に秘めておくことにする。

「次はっと、岡田だな」

近年活躍が目覚しい末っ子ちゃんから送られてくる写真は一体どんなものやら。
ぽちりと開いたメールに写っていたのは。

「あー・・・そうだった。あいつは親バカだった」

それは愛犬さつまを抱き上げて、男前な顔をとろけんばかりの笑顔に変えている岡田の写真だ。
この顔はちょっとファンの子には見せられないな、と思う。
まぁ作られた笑顔ではないその表情には何処かあどけなさが見られて可愛いんだけどな、などと思うのはそれこそ親バカだろうか。

「で、最後は長野か」

思うに、この企画の立案者であろう彼は一体どんな写真を送ってきたのか。
最後の未開封メールを開けば、表示されたのは予想外のもので。
件名と本文に何も書かれていないのは今までと同じだったけれど、添付されている写真に長野の姿は写っていなかった。
その代わりに、写っていたのはイチゴのショートケーキ。
しかもワンホール丸ごと一つ。
その上にはロウソクと、チョコレートで作られたプレートが乗っている。
そこには・・・

「あいつ・・・」

その写真に見入っていたら、六度目の振動が手を振るわせた。
今度はメールではない。
画面が着信を知らせるものに切り替わり、表示されたのは立案者の名前。

「もしもし?あぁ、届いたよ」

そうとだけ答えて、それから何と言ったらいいのか分からなくなって黙る。
でもそれは不自然な無言ではなくて、余韻を楽しむための無言。
相手もどうやらそれが分かっているらしく、何も言わないで待ってくれている。
その優しさに、口元が緩んだ。

「・・・なぁ、あのケーキ、わざわざ買ってきたのか?」

相手はそうだと答えて、何なら今から食べに来る?と笑った。
ワンホールを一人で食べるのは大変だし、一人じゃ寂しいでしょう?とさらりと言葉にする。
全く、こいつは。

「・・・戦力外でいいなら、行く」

甘いものは苦手だ。
ケーキを食べる戦力にはならないだろう。
それでもいいか、と聞けばやはり笑って相手はOKをくれる。

「・・・さんきゅ」

感謝の言葉が口をついて出た。
何に対するものなのか、きっと相手は察してくれることだろう。
何せ、長い付き合いだ。

案の定、相手は穏やかな声でどういたしまして、と答えた。

「あ・・・そうだ。大事な事言い忘れてた」

それは何よりも、大事な言葉だ。
今日、この日を。
特別なものにする言葉。







「15周年おめでとう」









そして。









「16年目もよろしく」




















★Thank you for all!! & Thank you for V6!!★

そんなわけでブイコレ。は12月25日、クリスマスを以って閉幕しました!
皆様お疲れ様でしたー!!(笑)
そして参加者の皆様、素敵な作品を本当にありがとうございました!!

今回はなんだかバタバタして、色々出来なかったことが多いですが。
それはまぁ反省点として、次回に反映できればと・・・

次回は・・・リーダーの四十路バースデー祝祭とかやっちゃう?(笑)
考えときます。つーかやる人がいればそれに乗っかる方向でもいいです。(笑)

とにかく、ブイコレ。が無事(でも無い気がするが・笑)閉幕できたことに感謝を。
本当に本日まで皆様お付き合いありがとうございました!!
そしてV6さん、15周年おめでとう!!
16年目もどうぞよろしく!(笑)

2010/12/26/Sunday 桐堂光騎拝